こんにちは、DolphinEです。
今回の記事では、僕が大学の卒業論文にて「ボカロPにとってVOCALOIDとはどんな存在なのか?」についての研究を行ったので、その内容をまとめていきたいと思います。
ボカロP、絵師、リスナー、その他VOCALOIDが好きなすべての方に楽しんでいただけたら嬉しいです。
VOCALOIDの在り方について学術的に研究
今回のこの研究は、僕の大学での卒業論文にあたって行ったため、一応学術的な内容に基づいて実施しました。
とはいえ、今回の研究自体はそれほど専門性の高いものでもなく、割と感覚的に理解しやすいと思います。
今回の記事では、せっかくなので実際に制作・提出した卒業論文と同じ流れで書いていこうと思います。
- 問題提起:なぜこの研究をやろうと思ったのか
- 研究方法:具体的な研究の方法や手順
- 結果と考察:この研究に対する答え
それでは、さっそく内容の方に入っていきましょう!
結構長い記事になりそうですが、ぜひ最後までお付き合いください…!
問題提起:ボカロPにとってのVOCALOIDの在り方が気になったから
まずは、「なぜこのような研究をやろうと思ったのか」という部分についてですが、単純に僕が「VOCALOIDとはどんな存在なのか?」ということが気になったからです。
ボカロが好きな人ならよくご存じでしょうが、多くの人がVOCALOIDをもはやただのソフトウェアではないような存在として認識しているということは明らかでしょう。
ですが、「じゃあボカロってなんなの?」と聞かれると、はっきりとは答えられない人も多いのではないでしょうか。

さらに、こんな感じの議論はTwitter等でも盛んに行われているようですが、僕が見た限りだと、クリエイター、つまりボカロPがその議論の輪に積極的に入っていく姿を見ることは比較的稀であるように感じました。
そこで、今回は研究対象をボカロPとして活動している方に絞り、「ボカロPにとってVOCALOIDとはどんな存在なのか?」というテーマで研究を行うこととしました。
研究方法:ボカロPへインタビューし、その内容を分析
さて、ここからは具体的な研究方法について書いていきます。
細かい内容についてはおいおい説明していきますが、ざっくりとした流れとしては以下のようなものとなっています。
- 研究テーマに合った対象(今回はボカロP)にインタビューをする
- インタビューの内容を言語分析する
- 分析結果から、研究テーマに対する答えを考える
このあたりでいい加減、どういう分野での研究なのかについて触れておこうと思います。
今回の研究は、分野としては心理学にあたり、その中でもカウンセリングといったような臨床的な要素の強い質的研究法というものを用いています。
心理学の手法:量的研究法と質的研究法
いきなり質的研究法といっても、なんのこっちゃという感じでしょうから、まずは一般的な大学生が学ぶ心理学の手法である量的研究法というものについてご説明します。
量的研究法とは、統計学に基づいて研究する心理学の手法です。

「質問内容について、あてはまるかどうかを5段階の数字で答えてください」みたいなやつです。
これで感情等に関する質問をして、その人の感情を数値に表してもらい、それを統計学に基づいて分析するといった感じです。
これが量的研究法と呼ばれる心理学の手法で、基本的に心理学と言ったらこちらを指します。
それに対して、今回の研究で用いた手法は質的研究法というもので、統計的な処理は行いません。
ざっくりいうと、その人個人の人生や体験に焦点を当てて研究する方法といった感じでしょうか。
だれにでも当てはまるようなことを数字に変換して統計処理、というのではなく、その人だけの人生経験等に注目しその体験を理解していく、といった方法です。
イメージとしては、皆さんが思い浮かべるような臨床心理士やカウンセラーによるカウンセリングが近いかもしれません。
この辺りは、結構専門的な内容になってしまうので、あまりしっかりと理解しなくても大丈夫だと思います。
もっと詳しく知りたい方は、「心理学 質的 量的」等のワードで検索してみてください。
3名のボカロPさんにインタビュー
それでは具体的な研究内容に入っていきましょう。上述したように、最初に行ったのはボカロPさんへのインタビューです。
今回インタビューにご協力いただいたのは、ねじ式さん、ciscoさん、ワカバさんの3名のボカロPさんです。
・ねじ式さん
Twitter、HP、ニコ動マイリスト、Youtube
・ciscoさん
Twitter、ニコ動マイリスト、Youtube
・ワカバさん
Twitter、ニコ動マイリスト、Youtube
3人とも、僕が作品はもちろんクリエイターとしての姿も大好きで尊敬している方々なので、今回お話が聞けて本当に嬉しかったです…!
皆さん、ご協力いただき本当にありがとうございました!!
流れだけ決めて、細かい質問はその場で考える「半構造化面接」
今回のインタビューは事前に質問内容を決めておくのではなく、大まかに「こんなことを聞こう」という流れだけ決めて、あとはその場その場で質問を考える方法(専門用語でいうと「半構造化面接」)で実施しました。
こちらの方が、事前に質問をがっちり用意するよりも、お話の内容に応じて柔軟に質問ができるというメリットがあります。
ただ、当然それなりの難しさはあるので、それについては事前にゼミ生同士で練習を重ねるなどの準備をしていきました。
また、その場で考えるといっても、「これは聞くべきことだろうか…?」と判断に迷うこともあるため、その判断の拠り所となるリサーチクエスチョン(RQ)と呼ばれるものを設定しました。

今回は、タイトルにもある「ボカロPにとってVOCALOIDとはどんな存在なのか?」という問いをRQとして設定しました。
そして、このRQをもとに、インタビューの大まかな流れを把握するためのインタビューガイドというものを作成しました。
今回用いたインタビューガイドは、以下のような流れで構成されました。
- これまでの音楽制作や楽器演奏の経験について
- ボカロを知ったきっかけと、ボカロPになったきっかけ
- 現在制作している自身のボカロ曲について
- 楽曲提供やセルフカバーなど、ボカロ以外の楽曲について
- ボカロのキャラやライブラリごとの違いについて
- あなたにとってボカロとは?
ちなみに、この順番についても絶対ではなく、そのときのお話の流れに応じて順番を入れ替えたりもしていました。
インタビュー内容を言語分析
インタビューが終わったら、その内容を文章に起こしていきます(逐語化)。
このとき、文章はインタビューのときに話した言葉をそっくりそのまま書くようにします。
この作業が終わったら、いよいよ言語分析と呼ばれる作業に入ります。
なお、質的研究法で用いられる言語分析にもいろんな種類があるのですが、今回僕が用いた方法はグラウンデッドセオリー法(通称:GTA)と呼ばれています。
まあ、はっきり言って名前なんて、専門家じゃないんだから覚える必要はないでしょうが、流れとしては以下のような感じです。
- コード化
- カテゴリー化
- 理論化(概念図の作成)
…言葉だけ見てもわけがわからないと思うので、順番に説明していきます。
コード化:協力者の語りに見出しをつけていくイメージ
コード化とは、ものすごく簡単に言うと、インタビュー協力者の方が話してくれた内容について、その発言の重要な部分をまとめた見出しのようなものをつけていくような作業です。
そして、ここでつけた見出しのようなものをコードと呼びます。
例えば、
「普段はどんなふうに曲作りをされてますか?」
という質問に対して、
「えーっと、曲作りは…まずその曲のコンセプトとかイメージを決めて。で…作詞と作曲を同時にやって、それから、編曲・ミックスみたいな…あ、あと曲名から思いつくことも結構あります。」
といったような発言があったら、コードは以下の2つになるでしょうか。
- 「曲作りはまずコンセプトを決めて、作詞作曲、編曲、ミックスといった順で進めていく。」
- 「曲名からアイディアが思いつくこともある。」
(ちなみに、今のやり取りは僕の創作です。)
もちろん、これはあくまで一例に過ぎず、絶対的な正解があるわけではないですが、重要なのは上述したRQ、つまり「この研究で何を知りたいのか」を意識することです。
なので、どのようにコード化すればいいか迷ったときは、RQのことを思い出すようにしていました。
また、コード化だけではなく後述するカテゴリー化や理論化でもそうなんですが、こういった作業は主観なくしては行うことができません。
しかし、学術的な研究というからには、しっかりと客観性を保つ必要があります。
そこで僕が所属していたゼミでは、ゼミ生同士で協力しあいながら分析を進めていました。

カテゴリー化:コードを似たもの同士でグループに分類
続いてカテゴリー化ですが、これは感覚的にもわかりやすいかと思います。
カテゴリー化とは、コード化によって生成されたコードを、似たようなことを言っているもの同士でグループに分け、分類していくという作業です。
例えば、以下のようなコードがあったとします。
- ボカロを知ったきっかけは、友達に勧められたから。
- 動画サイトで偶然ボカロ曲の動画を見て、興味が湧いた。
このようなコードであれば、「VOCALOIDとの出会い」といったカテゴリーにまとめることができるでしょう。
そして、その作業は何段階かに分けて行い、下位から上位にいくについれて分類の幅を広げていきます。

今回は、コードから構成される下位カテゴリー、下位カテゴリーを分類した中位カテゴリー、そしてその中位カテゴリーから成る上位カテゴリーといったように、3段階に分けて分類しました。
なお、この作業についてもコード化同様、RQを意識することと、他者と協力して行うことを重視して実施しました。
理論化:上位カテゴリーの関係性を示す概念図を作成
分析の最後は理論化です。
ここでは、先ほどのカテゴリー化で生成された概念的なまとまりである上位カテゴリーに注目し、それらの関係性について考えます。
そして、それらの関係性を図で示したものが概念図と呼ばれるものです。
これは、実際に見ていただいたほうが早いでしょう。
この図の中にある文章1つ1つが上位カテゴリーであり、それらの関係を想像して図にしました。

以上で、研究方法の説明は終わりです。
ここからようやく、本研究で分かったこと、そして「ボカロPにとってVOCALOIDとはどんな存在なのか?」という核心に迫っていきます。
結果と考察:ボカロPにとってVOCALOIDの在り方とは
ここまで長かったですが、ここからが本番です!
いよいよ、「ボカロPにとってVOCALOIDとはどんな存在なのか?」という問いに対する答えを書いていきます。
また、これに加えて、分析の過程で「そういったVOCALOIDに対するイメージがどのように生まれているのか?」という点についても検討可能だったので、それについても併せて考察していきます。
これらを述べるにあたって、以下のような流れでご説明していきます。
- インタビュー結果を分析してわかった概念を表す11個の上位カテゴリー
- 上位カテゴリーの関係性を示した概念図の説明
- RQ「ボカロPにとってVOCALOIDとはどんな存在なのか?」に対する答え
概念を表す11個の上位カテゴリー
まずは、インタビューとその結果を分析した結果わかった、11個の概念的な上位カテゴリーについて説明していきます。
概念といってもそれほど難しいものではなく、説明を聞けばすぐに納得できるものだと思います。
- 製品・公式設定から生まれるイメージ
これは、ボカロの声やビジュアルといった、公式設定あるいは製品としてすでに決められている部分から、VOCALOIDに対するイメージが生まれているところがあるということを示しています。
ボカロは公式設定がほとんどなく、そこからの影響がほとんどないとよく言われていますが、それでも声やビジュアルからの影響は少なからずあるということがわかりました。
- ほかのクリエイターからの影響
ほかのクリエイターの作ったボカロ作品(絵や楽曲、小説など)や、ボカロPになって出会ったほかのボカロPといったように、自分以外のボカロにまつわるクリエイターからの影響によって、VOCALOIDのイメージができているということです。
やはり公式設定がないボカロにとって、クリエイターの作った作品がボカロのイメージを形成するうえで重要であり、それはボカロPにとっても同様であるようです。
- ファン・リスナーからの影響
これはファンからの影響で、特にボカロPさんがボカロファンをどのようにとらえているかといった点や、それによって自身の作品やボカロに対するイメージに影響があるということです。
これは自ら作品を作り、その受け取り手のことを考えるクリエイターならではな要素かもしれないですね。
- 創作に対する認識の前向きな変化
ここでは、VOCALOIDやその作品が多数アップされているニコニコ動画からの影響によって、創作に対して前向きになれたということが示されています。
特に初音ミクの登場による影響が大きく、それによって「自分もボカロPになって創作をしよう!」という気持ちにさせてくれたということですね。
これもクリエイター特有のもの…というより、これがあったからこそクリエイターになたっという感じですかね。
- クリエイターに活動・挑戦の場を与えてくれる存在
これは、VOCALOIDがクリエイターに活動や作品を発表する場を与えてくれるということを表しています。
つまり、曲作りは好きだが歌は得意じゃないというような人でも一人で作品を完成させることができるといったことや、VOCALOIDという1つの音楽シーンとしてたくさんのファンがいてにぎわっているので、そこで作品を出すことによって聴いてもらえるといったことですね。
- クリエイターに自由を与えてくれる存在
これも文字通り、VOCALOIDはクリエイターに自由を与えてくれる存在であるという認識を示しています。
ここでいう自由とは、人間には不可能な表現を可能にしてくれるといった点だったり、自分の感性を100%出すことができるといった点だったりのことです。
総じて、今まで人間だけでは表現できなかったことをボカロが可能にしてくれた、というイメージですね。
- ソフトウェア・楽器としてのVOCALOID
VOCALOIDを純粋な楽器やソフトウェアとして見ている側面があることを示しています。
例えば、ボカロのライブラリごとに楽器としての違いを感じるといった点や、自分の声の代わりとなってくれるボイスチェンジャーのようなものといったようなとらえ方です。
やはりこのようなとらえ方も、ボカロPにとっては無視できない側面であったようですね。
- アーティストとしてのVOCALOID
これは、VOCALOIDをアーティスト、つまりより人間に近いような存在としてとらえているということを表しています。
これについては、皆さんもイメージしやすいでしょうが、特に楽曲を作るボカロPさんにとっては、VOCALOIDという1人のアーティストに向けて曲を作る、という意識があるケースも多いようです。
- 人間とも機械ともつかない存在
正直、これの説明が一番難しいかもしれません…
これは、ボカロPがVOCALOIDを完全に人間と同様の存在であるとも、逆にただのソフトウェアでしかないとも言い切れない、非常にあいまいな存在としてとらえているということを示しています。
イメージでいうと、先ほどの「アーティストとしてのVOCALOID」と「ソフトウェア・楽器としてのVOCALOID」の間で揺れ動いているかのような認識ですね。
- クリエイターとしての考え方
ここでは、ボカロPとしての考え方がまとまっています。
当然ボカロPさんごとに違いはありますが、総じて自分の中にあるVOCALOIDの在り方を踏まえたうえでのボカロに対する考え方や、ボカロシーン全体やそれらから受ける影響に対する意識といった内容で構成されたカテゴリーです。
- VOCALOIDでの曲作り
これも文字通り、どのようなボカロ曲を作っているかといった点や、ボカロ曲を作るときにどういったことを考えているのかという内容でまとまっています。
もちろん、こちらについてもボカロPさんごとに違いがありました。
以上で、インタビュー結果を分析してわかった11個の概念を表す上位カテゴリーの説明は終わりです。
11個の上位カテゴリーの関係性を示す概念図
続いて、以上11個の上位カテゴリーの関係性を示した、概念図について説明していきます。
改めて、概念図を見てみましょう。
VOCALOIDのイメージ形成において重要な「周囲からの影響」系
下に配置されている「製品・公式設定から生まれるイメージ」「ほかのクリエイターからの影響」「ファン・リスナーからの影響」の3つは、ボカロPさんの中にあるボカロに対するイメージやクリエイターとしての考え方、曲を作る際の意識などに広く影響を与えていることを示しています。
これは、アニメキャラのように性格や設定が決まっていないVOCALOIDのイメージが、こういった周囲からの影響でできている部分があると考えられます。
ちなみに、図の中で「製品・公式設定から生まれるイメージ」を囲む円が、ほか2つに比べて小さくなっていますが、これはこの要素からの影響がほかの2つに比べて小さいことを表しています。
このことは、このカテゴリーを構成するコードやカテゴリーが少なかったこと、つまりインタビューにおいてこの要素からの影響を示唆する発言がほか2つに比べて少なかったことから推測されます。
VOCALOIDは「ボカロPの力になってくれる存在」
続いて、中央部の上矢印内部にまとまっている「創作に対する認識の前向きな変化」「クリエイターに活動・挑戦の場を与えてくれる存在」「クリエイターに自由を与えてくれる存在」の3つは、どれもボカロPさんがVOCALOIDを「クリエイターに力を与えてくれる存在」としてとらえているという点で共通しています。

このイメージを表すために、概念図ではボカロPに見立てた人型の図形を押し上げるような形の上矢印内にまとめました。
VOCALOIDは「人間」なのか「機械」なのか
概念図上部の吹き出し内にある「ソフトウェア・楽器としてのVOCALOID」「アーティストとしてのVOCALOID」「人間とも機械ともつかない存在」の3つは、ざっくり言うとVOCALOIDは人間なのか機械なのか、といった部分の関係を示しています。
インタビュー内容を踏まえると、これら3つの在り方はボカロPさんの中でどれか1つに決められているわけではなく、この3つの関係の間で揺れ動いているかのような認識をしていると考えられます。
実際、インタビューで「自分にとってVOCALOIDはアーティストです」と言い切った方でも、その記録全体を分析すると、VOCALOIDを楽器やソフトウェアとしてとらえていることを示唆する発言が見つかったのです。
VOCALOIDシーン全体で循環するかのような相互作用
概念図の説明の最後に、真ん中にある人型の「クリエイターとしての考え方」と、右側にある音符型の「VOCALOIDでの曲作り」の周囲との関係についてご説明します。
「クリエイターとしての考え方」は、下の「周囲からの影響」系の3つや、自身の中にあるVOCALOID在り方からの影響を受けてできていると考えられます。
そして、ボカロPさんはこのような考え方を含めたほかのすべてのカテゴリーからの影響を受けて「VOCALOIDでの曲作り」をしていると思われます。
さらに、こうやってボカロPさんによって作られた楽曲は同じようにほかのボカロPさんや絵師などのクリエイター、ボカロファン・リスナー、さらにはボカロシーン全体やそれを受けて新たなVOCALOIDを制作する公式にまで影響を及ぼしているのではないかと推測できます。
このように、ボカロPは周囲からの様々な影響を受けてボカロに対する考え方を持ったり曲作りをしたりしていて、それが同じようにほかの誰かに影響し、循環するかのような相互作用で、VOCALOIDに対するイメージができていると考えました。
RQ「ボカロPにとってVOCALOIDとはどんな存在なのか?」に対する答え
それでは最後に、RQである「ボカロPにとってVOCALOIDとはどんな存在なのか?」と、分析の過程で生まれた「そういったVOCALOIDに対するイメージがどのように生まれているのか?」という2つの問いに対する答えをまとめます。
RQに対する答えを示しているのは、概念図において中央部に位置している上矢印と上部にある吹き出しの中に配置されている計6つの上位カテゴリーです。

そして、クリエイターにとってのVOCALOIDの在り方はこれらの中に1つの絶対的な答えがあるわけではなく、様々な在り方が混在しているような状態であると考えられます。
ですので、無理やりまとめるとするならば、「ボカロPにとってVOCALOIDとは、『様々な側面を持っていて、一言では言い表せないような存在』である。」ということです。
そしてもう一つ、こういったイメージがどのようにして生まれているのかについては、前述したようにVOCALOIDにまつわるすべての人の間で循環するように発生している相互作用によってイメージができていると考えられます。
このような相互作用が生じるのは、公式などからの影響が少なく、ボカロPや絵師が自由に創作活動をすることが許容されているVOCALOIDならではの現象といえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
だいぶ長く、内容もやや難しい記事になってしまいましたが、楽しんでいただけだでしょうか…?
最後に、今回の記事の内容について要点をまとめておきます。
- 心理学を用いて、「ボカロPにとってのVOCALOIDの在り方」について研究
- ボカロPさんにインタビューを実施し、その内容を言語分析
- 結果、11個の概念を表すカテゴリーが生成され、うち6つのカテゴリーが「ボカロPにとってのVOCALOIDの在り方」を表していた。
- この6つはどれか1つに絞られるのではなく混在しており、VOCALOIDはいろんな側面を持った存在だと認識されている。
- このようなイメージは、VOCALOIDにまつわるすべての人同士の相互作用によって生まれている。
今回、大学の卒業論文としてこの研究に取り組んだのですが、自分の好きなことについて研究することができて、非常に楽しかったです!
また、ねじ式さん・ciscoさん・ワカバさんという僕が大好きなボカロPさんからたくさんお話を聞くことができたのもすごく嬉しかったし、1人のボカロPとしてもすごく勉強になりました。
ただ、この記事を書き上げてみて気づいたのですが、インタビューの具体的な内容がわかりにくくなってしまったような気がするので、インタビューの内容に絞った対談形式のような記事も書きたいなと思っています。
(これについては、ご協力いただいた皆さんからの確認を取ったうえでやりたいので、少し時間がかかるかもしれませんが…)
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!