こんにちは、DolphinEです。
今回の記事では、2020年現在、合成音声界隈で話題になっている歌声合成ソフト「Synthesizer V」を使った際の感想やレビューを書いていこうと思います。
なお、Synthesizer Vを使ったオリジナル曲も公開してるので、ぜひ聴いてみてください。
Synthesizer Vは、再生機能に難ありだが歌声の作りこみやすさは抜群!
Synthesizer Vを使った感想を一言で言うと、
「再生機能に難ありだが歌声の作りこみやすさは抜群!」
という評価になりました。
この評価について、「歌声の作りこみやすさが抜群」という良い点と「再生機能に難あり」という悪い点に分けて、それぞれ詳しく書いていこうと思います。
Synthesizer Vの歌声が作りこみやすい3つの理由
Synthesizer Vの歌声が作りこみやすいのは、大きく分けて以下の3つの理由によるものが大きいと感じました。
- 波形や音程のラインが視覚的でわかりやすい
- 「ピッチ推移」機能が超便利
- 「音素」周りの機能が優秀
それぞれ1つずつ見ていきましょう。
Synthesizer Vは波形や音程のラインが視覚的でわかりやすい!
まず1つ目のポイントは、「波形や音程のラインが視覚的でわかりやすい」という点です。
以下の画像を見ていただければわかるかと思いますが、Synthesizer Vでは歌声の音声波形や音程のラインを表示することができます。
Synthesizer V Studioの「ピアノロール」パネル
しかも、この表示されている波形はパラメータを変更したらすぐにその変更内容を反映してくれるんです!

後述するピッチ推移をはじめとした便利な機能を使って歌声を作りこんでいく際に、このような視覚的な情報をもとにパラメータを設定していくことによって、かなり効率よく歌声を作りこんでいくことができたと感じました。
Synthesizer Vの目玉といえる「ピッチ推移」機能
次のポイントは、「ノートプロパティ」パネルにある「ピッチ推移」機能についてです。
おそらく、これがSynthesizer Vの目玉といっても過言ではないかと思います。
「ノートプロパティ」パネルにある「ピッチ推移」機能
この機能を使うことによって、ボーカルの表現の要である「しゃくり」や「フォール」といった表現を簡単につけることができます。
設定するパラメータもかなり直感的でわかりやすい上に、上述したようにピッチラインを視覚的に表示するとさらにやりやすくなりました。

個人的によく使ったやり方としては、しゃくりをつける際に、ピッチラインを見て曲のキーに合った音程からのしゃくりにようになるようにパラメータを設定するなどしていました。
Synthesizer Vは「音素」周りの機能も優秀!
3点目、「音素」に関する機能も非常に優秀です。
具体的には、以下の2点が非常に良いと感じました。
- 1つの音符に対して1文字以上の言葉を入れられる
- 音素ごとの長さを%で設定できる
この2つの要素は、例えば4分音符1つに対して「ない」という2文字の言葉を当て込んでいるケースなどで特に役立ちます。

ただ、4分音符1つに対して2文字ならまだ単純ですが、元の音符の長さや当て込む文字数によっては複雑になってきますし、なにより1音1文字だけだと自分の表現したい歌い方を形にするのにかなり苦労します。
それに対して、Synthesizer Vでは1音に対して複数の文字を当て込むことができ、それぞれの長さも%で設定できるので、楽譜上では表しにくい歌い方も再現しやすいと思います。
Synthesizer Vは再生機能に難あり…
ここまでは、Synthesizer Vの良いところについて書いてきましたが、やはり良くないなと感じる部分もありましたのでその点についても書かせていただきます。
(なお、これらの問題点はバージョン1.0.5で使用した際に感じたものであり、今後のバージョンアップで改善される可能性もあります。)
Synthesizer Vの良くない点は、やはり「再生機能に難がある」というところに集約されると思います。
具体的には、以下の3点です。
- 停止時に再生開始位置に戻る機能がない
- 「一時停止」の概念が分かりにくい
- スクリプトへのショートカットキーの割り当てで問題が発生する
Synthesizer Vには「停止時に再生開始位置に戻る」設定ができない
Synthesizer Vでは、再生を停止したときに再生を開始した位置に戻るような設定にすることができません。

これはVOCALOID EditerやDAWのCubaseでも可能な設定であり、ほとんどのDTMerがこの設定を有効にしていると思われます。
この機能がないと、「パラメータをいじる→再生して確認」という試行錯誤を多数繰り返す調声作業を行ううえで非常に効率が悪いです。
ただ、このことを僕がツイートしたところ、フォロワーのゆきかざりさんがスクリプトを書いてくださいました!
Synthesizer Vは外部スクリプトを読み込むことによって、ユーザーが機能を拡張させることができます。
このスクリプトを使うことによって、「停止時に再生開始位置に戻る」という設定を疑似的に実装することが可能です。

スクリプトのダウンロードはこちらから行えます。
ゆきかざりさんのスクリプト解説動画
この機能の重要性は、以下のツイートの動画を見ていただければわかるかと思います。
今回の新曲の、#SynthesizerV 上での調声作業の一部です。
— DolphinE@新曲「不安眠症」 (@Dolphine_nico) August 24, 2020
延々と「パラメータ等をいじる→再生してチェック」という流れを繰り返しています。
もしゆきかざりさんのスクリプトがなかったら、再生チェックの前に毎回シークバーを動かす作業が入っていたことになります…https://t.co/wqM6N9xlKB pic.twitter.com/ufAC4EoWUn
DAWやボカロユーザーになじみのないSynthesizer Vの「一時停止」の概念
Synthesizer Vの再生機能は「再生」「停止」に加えて、「一時停止」という3つからなっているんですが、これもDTMer的には地味に違和感を感じます。
一般的なDAWソフトやボカロエディターには「一時停止」という概念はなく、再生するか停止するかの2つだけです。

Synthesizer Vを使うのは、DAWを使うDTMerやボカロなどほかの歌声合成ソフトを使ったことがある人が多いでしょうし、実際UIもそういった人たちになじみのある形で作られていました。
にもかかわらず、再生機能だけはそうではない形で作られていたため、なぜこのような仕様にしたのか、DAWやボカロと同じような仕組みにすることはできなかったのかと疑問に感じてしまいます。
Synthesizer Vはなぜかスクリプトへのショートカットキーの割り当てがうまくいかない…
最後に、上述したゆきかざりさんのスクリプトを入れたときに発生したショートカットキー関連の問題点について書いていきます。
これについては、以下の2つが挙げられます。
- スペースバーへのショートカットキーの割り当てがうまく機能しない
- スクリプトに設定したショートカットキーが再起動するとリセットされる
1つ目については、スペースバーにはデフォルトで「再生」と「一時停止」が割り当てられていました。
ただ、僕の場合はゆきかざりさんのスクリプトを使って「再生/停止」がやりたかったので、デフォルトの割り当てを削除し、スクリプトにスペースバーを割り当てました。
ところが、なぜか削除したはずのスペースバーへの割り当てが生きており、スクリプトによる再生ではなくSynthesizer Vの再生機能による再生となってしまいました。
詳しくは、以下のツイートの動画をご覧ください。
ありがとうございます…!
— DolphinE@新曲「不安眠症」 (@Dolphine_nico) August 17, 2020
動作としてはまさに望んでいたやつです…!めっちゃ助かりました!
ただ、スペースキーへのショトカの割り当てがうまくいかない感じで、簡単な検証?をしてみたので、一応動画にてお伝えしておきます…
改めて本当にありがとうございました…! pic.twitter.com/okcFCEdNkT
ゆきかざりさんもいろいろ調べてくださったのですが、やはりユーザー側だけではどうしようもないような感じだったそうなので、公式でそのような設定がされているっぽい感じでした。

そのうえ、2点目はスペースバーだろうがほかのキーだろうが関係なく、スクリプトにショートカットキーを割り当てても再起動すると割り当てがされていない状態にリセットされてしまうという不具合もありました。
Synthesizer Vの問題点はすべて再生機能に起因している…?
以上のように、いろいろと問題点があるように感じられましたが、それらは総じて再生機能の仕組みがよくわからない・なじみのない形であることに起因しているように思います。
そして僕としては、ゆきかざりさんの作ってくれたスクリプトのような動作を公式でできるようにしてさえくれれば文句なかったなという思いなので、ぜひこの機能は実装してほしいと強く感じています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後に、この記事の内容をまとめておきます。
- Synthesizer Vには歌声を作りこみやすい機能がたくさんそろっている!
- ただし、DTMer的には再生機能に難があるように感じる…
悪い点についての内容が思った以上に長くなってしまいましたが、Synthesizer Vは音源として非常に優秀だと感じていたので、なおさらよくない点についてもったいなく感じてしまったところがあるように思います。
なお、今回はSynthesizer V自体の評価や感想について書くことにしていたので、ライブラリについては全く触れませんでした。
(ちなみに使用ライブラリは琴葉茜・葵でした)
ソフト自体の仕組みは1曲作りこめばだいたいわかりますが、ライブラリの特徴はもう少し幅広い曲で試してみないとわからないかもですね。
ただ、葵ちゃんについては今まで歌ボもやってきましたので、歌ボの葵ちゃんと比べてどんな感じかというのも書いてみようかな、と何となく考えています。
今回の記事が、ほかのSynthesizer Vユーザーさんや購入を検討している人の役に立ったら嬉しいです。
読んでいただきありがとうございました。